叢書 | 日本SFノヴェルズ |
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出版社 | 早川書房 |
発行日 | 1975/08/31 |
装幀 | 金森 達 |
革新的発想の結晶
"想像できないことを想像する" - この言葉は山田正紀氏のSF作品の精神的支柱ともいえるフレーズです。デビュー作にして代表作『神狩り』はまさにその化身であり、これまでのSF作品の枠組みを越えた驚異的な世界観を展開しています。
「古代文字」が示す神の論理
作品の中心には、若き天才情報工学者の島津圭助が存在します。彼は、ある古代遺跡で発見された石室の壁に刻まれた「古代文字」に出会います。この「古代文字」は、極端に単純化された2種類の論理記号と、入り組んだ関係代名詞からなる論理構造を持っており、人間の理解を完全に超越したものなのです。
言語を超える「他者性」
「語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない」- 冒頭でヴィトゲンシュタインのこの言葉が引用されていますが、まさにこの古代文字は「語りえぬもの」の象徴なのかもしれません。しかし、島津は知的な好奇心に駆られ、その解読に挑戦していきます。
ここで山田氏は、神の描写に際して陳腐な類語的表現を用いることはありません。代わりに、この「古代文字」を駆使して神の論理的「他者性」を表しています。人智を圧倒する論理があり、人間には理解できない複雑な構造があります。つまり、神とは論理次元の違う存在であり、人間が到達できる域を完全に超越しているということなのです。
独創的コンセプトと技術の粋
この発想の独創性は本作の最大の見所と言えるでしょう。SF作品において、近未来や将来の科学技術をいかに巧みに扱うかということは重要ですが、それ以上に重要なのがコンセプト自体の革新性なのです。『神狩り』の「古代文字」は、まさにその好例なのです。
加えて、本作には抜群の読みやすさとストーリーテリングの巧みさがあります。ステレオタイプな描写ゆえに感情移入がしやすい登場人物たちや、緻密に用意された伏線とそのさばけた有り様等々、本作は技巧の高さとエンターテインメント性の両方を高い次元で兼ね備えた作品となっています。
ハードSFの課題に挑む
重厚な哲学的主題と軽快なエンターテインメント性の絶妙なバランスをどう保つかは、いわゆる"ハードSF"作品にとって永遠の課題です。しかし、『神狩り』は見事にその綱渡りに成功しているのです。
現代社会に問われるもの
さらに言えば、本作は現代社会とも密接に関わるテーマを投げかけています。AI技術の発達や人工知能との共生の問題、科学の発展と人間の誇りの問題等々、私たち現代人が直面する重要な問題が作品の中にうまく反映されているのです。
物語の大団円において、主人公の島津はある種の選択を迫られます。そこで彼がどのような決断をするのか、それこそが一つの教訓になっているのかもしれません。"私たちはどう生きるべきなのか" - 本作から私たちはそのヒントを得ることができるかもしれません。
結論
結論として、『神狩り』は絶妙のストーリーテリングとSF的発想の革新性を併せ持つ、まさに山田正紀氏のデビュー作であり代表作と呼ぶに値する出色の作品です。新しいSFの地平を切り開くのに十分な価値があり、忘れ去ることのできない一作です。多くの読者にお薦めしたい名作SF小説です。
文庫・再刊情報
叢書 | ハヤカワ文庫 |
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出版社 | 早川書房 |
発行日 | 1976/11/30 |
装幀 | 武部本一郎 |
叢書 | 角川文庫 |
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出版社 | 角川書店 |
発行日 | 1977/11/10 |
装幀 | 福田隆義 |
叢書 | ハヤカワ文庫 |
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出版社 | 早川書房 |
発行日 | 1990/03/31 |
装幀 | 佐藤道明 |
叢書 | ハヤカワ文庫 |
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出版社 | 早川書房 |
発行日 | 1995/05/31 |
装幀 | 宇野亜喜良 |
叢書 | ハルキ文庫 |
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出版社 | 角川春樹事務所 |
発行日 | 1998/08/18 |
装幀 | 三浦 均、芦澤泰偉 |
叢書 | ハヤカワ文庫 |
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出版社 | 早川書房 |
発行日 | 2002/07/15 |
装幀 | 宇野亜喜良 |
叢書 | ハヤカワ文庫 |
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出版社 | 早川書房 |
発行日 | 2010/04/15 |
装幀 | 坂野公一 |