魔空の迷宮

魔空の迷宮

夢と現実の狭間で紡がれる、幻想的な物語の迷宮

魔空の迷宮 初版書影

叢書 C☆NOVELS
出版社 中央公論社
発行日 1986/11/25
装幀 佐藤裕、角田純男

山田正紀による「魔空の迷宮」は、都市の風景とその裏に潜む謎を繊細に描いた作品です。青山を舞台に展開するこの物語は、消えた銀行員の謎を追う中で、大きな陰謀に触れていく主人公の姿を追います。今回は、この不思議で魅惑的な作品を深く掘り下げていきます。

紹介

「魔空の迷宮」では、失踪した銀行員・竹宮の妻、章子からの依頼を受けた水野が物語の主人公です。彼の調査はやがて、大銀行の合併と青山の土地買い占めが絡む巨大な謎に触れることになります。青山に次々と建つポストモダン建築と、そこに展示される章子の作る不気味な魔女人形、そして赤い帽子を被った女たちの官能的な存在。青山で何が起ころうとしているのか?この疑問が物語を引っ張ります。

感想

この作品は、青山を背景に展開するエロティックなホラーでありながら、山田正紀特有の雰囲気が漂う、一風変わった作品です。ホラーとしての直接的な恐怖は少ないものの、読後には確かな怖さが残ります。テーマは山田正紀の他の作品と共通する部分がありつつ、終盤に向けてこの作品独自の展開を見せ、非常に成功していると感じられます。

作品解説

「魔空の迷宮」の中心にあるのは、都市開発という現代社会のテーマです。作品を通じて、山田正紀は都市の変化と、それに伴う人間の欲望や恐怖を巧みに描き出しています。また、ポストモダン建築や魔女人形といった、一見すると場違いに思える要素が物語に深みを加えています。

テーマと象徴

山田正紀は、「魔空の迷宮」において、都市の変貌を象徴するポストモダン建築群や、その中で展示される不気味な魔女人形を通じて、現代社会の欲望と恐怖の複雑な絡み合いを描きます。赤い帽子の女たちは、この物語の中で官能と恐怖の象徴として機能し、読者に深い印象を与えます。

結び

山田正紀の「魔空の迷宮」は、都市の風景を背景に展開する独特なホラー作品です。作品を読むことで、読者は現代社会の謎と恐怖を新たな視点から考察する機会を得ることができます。この魅力的な作品を通じて、あなたも未知の迷宮へと足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

文庫・再刊情報

魔空の迷宮  文庫書影

叢書 中公文庫
出版社 中央公論社
発行日 1995/12/18
装幀 藤田ツトム、ひろき真冬