
クトゥルフ少女戦隊 第一部 セカイをわたしのスカートに / 第二部 セカイの中心で私を叫んだケモノ
クトゥルフ×魔法少女?いや、これは「進化」の神話だ!
Table of contents
叢書 | The Cthulhu Mythos Files |
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出版社 | 創土社 |
発行日 | 2014/10/01 |
装幀 | 猫将軍、山田剛毅 |
叢書 | The Cthulhu Mythos Files |
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出版社 | 創土社 |
発行日 | 2014/12/01 |
装幀 | 猫将軍、山田剛毅 |
🧬 進化と死の神話が織りなすメタSFの怪作
「クトゥルフ少女戦隊」は、山田正紀によるSF小説作品であり、ラヴクラフト的神話世界(クトゥルフ神話)を基盤としつつ、メタ進化論・実存主義・セカイ系といった要素を容赦なく叩き込んだハイコンセプト作品です。
👀ワンポイント:タイトルに“魔法少女”や“クトゥルフ”とあるが、それらはむしろ読者の認知を狂わせるためのフェイクに近い。
参考出典:
🔬 物語の概要とキーワード:進化、死、実存、そしてアニメ
◉「進化コロシアム」で戦う少女たち
この物語の舞台は、「進化」そのものをテーマとした壮大なSF空間です。『クトゥルフ少女戦隊』の中心には、以下の4人の少女が存在します:
- 実存少女サヤキ
- 限界少女ニラカ
- 例外少女ウユウ
- 究極少女マナミ
👀ワンポイント:「実存少女」「限界少女」などのネーミングは、哲学的概念や文芸理論をそのままキャラに落とし込んだパロディかつメタファー。
彼女たちは、「怪物遺伝子(ジーン・クトゥルフ)」の発現を阻止するミッションを背負い、ゴキブリ、マウス、さらには進化自体と戦います。
◉アニメと現実の接続点
物語には劇中アニメ『クトゥルフ少女戦隊』が存在し、現実世界のキャラクターたちがそのキャラクターに「変身」していく構造が取られています。まさに「物語の中の物語」であり、「フィクションが現実に侵食する」構造が非常にメタ的です。
👀ワンポイント:「戦うのはなぜか?」という問いに対する答えは、本作のテーマそのものである。“なぜ?”と問う姿勢こそがこの作品のカギ。
📘 第一部&第二部の統一的解説
■ 第一部:進化とは“可能性の削除”である
第一部では、カンブリア爆発を引き合いに出し、**進化の裏側にある「選ばれなかった可能性」**に焦点が当たります。ここで重要なのが「メタ・ゲノム」という概念。これは単なる遺伝子ではなく、遺伝子を制御する遺伝子であり、すべての生命が「進化の方向性」から逃れられないことを示しています。
💡注目ポイント:これはまるでデネットの『意識の説明』や、ドーキンスの「利己的な遺伝子」理論にも通じます。
少女たちは、これに抗う存在。非発現型に戻す戦い=選ばれなかった可能性を「否定」する物語なのです。
■ 第二部:進化の正体は「死」である
第二部では、進化という現象の真の顔=「死の収穫」 であることが明かされていく。少女たちは死の運命に晒されながらも戦い続けるが、次第にその戦い自体が虚構であることにも気づいていく。
👀ワンポイント:ここからは“進化=成長”という一般的概念が完全に反転する。「進化とは、生の否定であり、死の加速装置である」という視点が作品全体を貫いている。
また、「絶対不在少年マカミ」をめぐる少女たちの恋愛感情も描かれるが、これはセカイ系構造を皮肉る意図が込められている。
👀ワンポイント:「絶対不在少年」という語は、実存主義やポストモダン文学における“空虚な中心”を示唆している。
💡 評論的視点:「進化」vs「物語」の戦い
この作品は、もはや単なるSFや魔法少女モノの枠に収まりません。
- 物語構造の自己崩壊
- アニメ・ラノベへの徹底的な批評性
- セカイ系・ハーレム系のフォーマットの意図的なズレ
これらはすべて、「進化」への比喩です。ラノベ的構造さえも“進化の道筋”として組み込まれているのです。
例:魔法少女なのに老婆や人妻が変身して戦う=テンプレートの否定 出典:読書メーター
🎤 読後感と評価:これは「読書」ではなく「受容体の再構成」だ
『クトゥルフ少女戦隊』を読んだ後の感覚は、はっきり言って普通の読書体験とは一線を画します。
- 読んで理解するのではなく、浴びるように読む。
- 構造が論理的に破綻していても、それが「正しい」形式。
- すべてが異形で異常、しかし一貫している。
読者感想では「意味がわからない、でも最高」との声が多数。 ブクログ
👀ワンポイント:本作は「理解しよう」とする姿勢よりも、“感じる”読書体験を前提に設計されている。つまり、読者が受け身でいてもいい。
🧨 ラノベとアニメ的要素の“否定と活用”
- ヒラヒラのコスチューム?→説明なし。
- ハーレム設定?→説明なし。
- 美少女たち?→実は老婆や犯罪者。
👀ワンポイント:こうした“説明なき設定”の数々は、アニメやラノベ的定型への徹底的な拒否として読める。だが、逆に言えば「テンプレの裏の裏」を描いているとも言える。
💬 読者からの声(ピックアップ)
「なんだこれ!?意味不明なのに読み切ってしまった」(読書メーター) 「進化=死とか、少女戦隊で言うなよ……でも好き」(ブクログ) 「これはラノベの皮をかぶった哲学書です」(ミスナビ)
👀ワンポイント:本作を理解する必要はない。むしろ“わからないままでもいい”という感想こそ、作品の意図とシンクロしている。
🤔 よくある質問(FAQ)
Q. クトゥルフ神話好きにおすすめですか?
A. YES。ただしラヴクラフトの正統派ではなく、山田正紀流に再解釈された“概念”としてのクトゥルフです。
Q. なぜ少女たちは戦うのですか?
A. 最初は理由が提示されますが、途中からその“理由”自体が解体されていきます。
👀ワンポイント:「なぜ?」を問い続けること自体が、読者への“進化の圧”なのかもしれません。
Q. アニメ化されてますか?
A. されていませんが、作中に「OPソング」や「決めポーズ」まであり、異常にアニメっぽい構成になっています。
🏁 最後に:これは物語の仮面をかぶった“現実改変マシン”だ
『クトゥルフ少女戦隊』を読み終えたあと、「自分が何を読んだのか分からない」という感覚になる読者は多いです。
でも、それが正解です。
👀ワンポイント:これは「読書」ではなく、「進化への曝露実験」なのです。読者の認知そのものを変えることこそが、本作の最大の目的なのかもしれません。