装甲戦士2

装甲戦士2
-戦艦奪回指令OZ-

パワードスーツ vs. 狂気の戦場!『オズの魔法使い』が血に染まる

2025年2月24日
2025年2月24日

装甲戦士2 初版書影

叢書 NON NOVEL
出版社 祥伝社
発行日 1994/07/20
装幀・扉カット 友部喜仁、EE 大林真理子

物語の基調:幻想と現実の境界線

作品の舞台はベトナム戦争末期。主人公の原田蒼生が所属する米軍傘下の極秘日本人部隊に、異常な任務が下される。メコン河から竜巻によって巻き上げられ、密林に軟着陸したという戦艦の回収作戦である。

本作の特徴は、『オズの魔法使い』をモチーフとしながら、戦場という極限状況における幻想性を描き出した点にある。鉄砲水や蛙の雨といった超自然現象、そして麻薬の存在が示唆される戦艦など、現実と非現実の境界を揺さぶる要素が随所に配置されている。

装甲戦闘服「パルメット・バグ」の進化

注目すべきは、シリーズを特徴づける装甲戦闘服「パルメット・バグ」の位置づけの変化である。本作では前作から進化を遂げ、戦闘用の装備という枠を超えて、幻想を誘発する装置としての側面が強調されている。この設定の深化により、物語における現実と幻想の交錯がより自然な形で描き出されることに成功している。

物語構造の特異性

シリーズ構想における「イヌの痩せる場所」という重要な目的地への旅が、突如として戦艦回収という任務にすり替わるという展開は、作品に独特の緊張感をもたらしている。主人公の蒼生が『オズの魔法使い』の配役から距離を置いた傍観者として描かれる点も、オリジナルな解釈として評価できる。

技法的成熟

本作において山田正紀は、戦場という非日常の空間を日常として受容していく人間の心理を、より深い洞察をもって描き出している。これは作家としての技法的成熟を示すものといえよう。

結びに代えて

残念ながら、「装甲戦士」シリーズは本作で中断してしまった。「イヌの痩せる場所」に到達せず、物語が尻切れトンボの状態で終わっていることは否めない。だが、この未完さが逆に作品に独特の余韻を与えているとも考えられる。山田正紀はあとがきなどで明確な理由を述べていないが、当時の架空戦記ブームに対する飽きや、他の創作への意欲が影響した可能性はある。とはいえ、テーマである「戦場の異常さ」は十分に描き切られており、読後には強烈な印象が残る。

「装甲戦士2」は、山田正紀の想像力がベトナム戦争という実在の舞台で飛翔し、幻想と狂気の旋律を奏でる作品だ。シリーズとしての完結は叶わなかったものの、その異色性と深みは今なお読む者を惹きつけてやまない。