叢書 | C☆NOVELS |
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出版社 | 中央公論社 |
発行日 | 1995/12/20 |
装幀 | 小島文美 |
異形と進化が交錯する究極のサバイバル
1. あらすじ紹介
東京・広尾の町を逃げ惑う辰巳は、死者をよみがえらせるカゲロウ型のデリヴィルスと、人間を殺戮するジャコウマダラチョウ型のデリヴィルスに遭遇する。彼が出会ったゾンビ化した医師は、「男児大量死産の原因はミトコンドリアにある」と告げるが、その真相とは?
一方、多摩川で発生した不可解な殺害事件を追う刑事・大滝は、被害者の子供たちが生前に「死後の後始末」を誰かに依頼していたことを突き止める。人類の技術と生物の進化が交錯する中、デリヴィルスがもたらすのは破滅か、それとも——?
2. 作品のテーマと見どころ
① 生物進化とウイルスの融合
本作では「デリヴィルス」と呼ばれる異形の生物が登場する。ウイルスのように宿主に寄生しながら進化を促し、時には死者を蘇らせることすら可能にする。この設定は、進化生物学や遺伝子工学といった科学的テーマと見事に融合している。
② ゾンビとミトコンドリアの謎
作中では、ミトコンドリアが「男児大量死産の原因では?」という仮説が語られる。このモチーフは、瀬名秀明の『パラサイト・イヴ』(1995年)とも共鳴するが、どちらが先かという議論も興味深い(※両作品とも1995年発表)。ミトコンドリアの進化的役割をホラーやSFの視点で捉え直している点が本作の独自性を際立たせている。
③ 異形の怪物たちの圧倒的存在感
巨大なカゲロウやジャコウマダラチョウ、人間の姿を残しながらもゾンビと化した医師など、本作には読者の想像を超える怪物が次々と登場する。そのビジュアルの異様さ、行動の不気味さは、まさにホラーSFの醍醐味だ。
3. 読後の感想
① ぶっ飛んだキャラと異常な展開
「お尻にキュウリ突っ込んで首吊ったゾンビ」など、常識を超えた異様な描写が次々と登場する。これは単なるホラーではなく、人類の進化を問うSFとしての側面を持っている。
② 未完の衝撃! 続きが読みたかった……
シリーズ4作目にして完結を迎えていないため、「ここからどうなるのか?」というモヤモヤが残る。しかし、それこそが本作の魅力とも言える。
③ ミトコンドリアSFとしての先進性
本作が1995年という時代に書かれたことを考えると、当時の科学的知見とフィクションの融合として先駆的な作品だったと言える。
まとめ
『幼虫戦線(デリヴィルス・ウォーズ)4』は、山田正紀らしいぶっ飛んだSFとホラーが融合した傑作だ。進化生物学や遺伝子工学をモチーフにしながら、ゾンビや巨大昆虫という怪奇要素を盛り込んでいる点も魅力的。未完で終わってしまったのが残念ではあるが、だからこそ「この先」を想像する楽しさもある。
山田正紀作品が好きな人はもちろん、『パラサイト・イヴ』のような生物SFが好きな人にもぜひ読んでほしい一冊だ。