叢書 | C☆NOVELS |
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出版社 | 中央公論社 |
発行日 | 1993/11/10 |
装幀 | ひろき真冬 |
「機神兵団8」の魅力を徹底解説
1. シリーズの転換点となる第8巻
『機神兵団』シリーズは、山田正紀による異色のロボットSFでありながら、単なる戦記モノにとどまらない哲学的・宗教的要素を内包した作品群だ。第8巻『機神兵団8』では、シリーズ前半で激烈な戦闘を繰り広げた機神たちが再び歴史の舞台へと呼び戻される。
物語の舞台は、東ヨーロッパでの激戦から2年後の1941年4月。ゴビ砂漠で発見されたナチス・ドイツの急降下爆撃機(スツーカ)の機内には、生存者として真澄公彦が眠っていた。彼は2年前の戦闘で命を落としたはずだったが……。
2. 道教とSFの融合——「機神」は神か?
本作では、機神たちが単なる兵器ではなく、白蓮教的な思想や宇宙的な存在と深く関わっていることが示唆される。敦煌の洞窟で「弥勒」として復活した機神は、もはや戦争兵器ではなく、神秘的な存在へと変容している。
このモチーフは、道教における「不死」や「神仙」の概念と結びつく。山田正紀は、単なるロボットSFではなく、東洋思想をベースにした独自のSF観を構築しているのだ。
3. 新勢力の登場——アメリカ電撃軍団と異星の影
本作では、新たにアメリカの巨大ロボットが登場する。これにより、ナチス・ドイツ、日本軍、共産軍、白蓮教徒、アメリカ軍といった勢力が複雑に絡み合い、物語はさらにスケールを増していく。
また、本作では「宇宙人」の存在が強く示唆される。道教と異星の技術が絡み合うことで、機神兵団の存在意義そのものが揺らいでいくのだ。
4. 「山田正紀節」全開——ロボットバトルから哲学へ
『機神兵団8』の特徴は、単なるロボットバトルに終わらない点だ。序盤こそ緊迫感のある戦闘描写が続くが、中盤以降は山田正紀特有の「茫漠としたなめらかな」文体へとシフトしていく。
物語は、機神たちの復活による戦闘の再開かと思いきや、徐々に哲学的な問いへと収束していく。これは、シリーズ前巻までの冒険小説的な展開とは異なり、SFの本質を突く構成となっている。
まとめ:『機神兵団8』はどんな読者におすすめ?
- 王道のロボットSFを期待する人にはやや意外性が強いかもしれない
- 道教、哲学、神秘主義に興味がある読者には刺さる内容
- 山田正紀作品特有の「変化」を楽しめる人向け
『機神兵団8』は、シリーズの流れを踏まえつつも、新たな方向性へと舵を切った作品だ。単純な戦争ロボットものではなく、東洋思想と異星の技術が絡み合う独自のSF観が展開される。これまでのシリーズとは異なる読後感を味わえること間違いなしだ。
文庫・再刊情報
叢書 | ハルキ文庫 |
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出版社 | 角川春樹事務所 |
発行日 | 2000/09/18 |
装幀 | 三浦均、芦澤泰偉 |