叢書 | TOKUMA NOVELS |
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出版社 | 徳間書店 |
発行日 | 1994/01/31 |
装幀 | 草彅琢仁、矢島高光 |
もう一つの戦後を描く衝撃作「影の艦隊4」
物語の核心
本作の舞台は朝鮮戦争期。物語は主人公・佐嶋夏男が操縦する最新鋭戦闘機「震風」とB29との空中戦の最中、突如として出現した零戦部隊との邂逅から始まります。しかしその零戦部隊は、意外にもB29を支援し、震風に襲いかかってきます。
この展開が示唆するのは、日本の分断状態です。一方にはソ連の影響下にある「日本群島人民共和国」とその軍事力「影の艦隊」、他方にはアメリカの後ろ盾を得た「新生日本」があります。両者の対立は、朝鮮戦争という国際的な紛争の中で、ついに直接的な軍事衝突へと発展していきます。
作品の特徴
本作の特筆すべき点は、国際法上の微妙な立場を巧みに描き出している点です。日本群島人民共和国はソ連以外からは国家として承認されておらず、その軍事力である影の艦隊は「武装テロリスト」として扱われます。そのため、新生日本側の対応部隊は「警察予備隊」という位置づけになっています。
また、アメリカは直接的な軍事介入を避けながら、新生日本を通じて間接的に事態に対応せざるを得ないという、冷戦期特有の複雑な国際関係も緻密に描かれています。
技術描写と人間ドラマ
作品では、ソ連の技術支援を受けた震電の後継機「震風」と、零戦62型との空中戦というドラマチックな場面が展開されます。しかし、これは単なる軍事技術の対決ではありません。同じ日本人でありながら、異なる信念と所属のもとに戦わざるを得ない若者たちの苦悩と決断が、繊細に描き込まれています。