SAKURA

SAKURA
六方面喪失課

失踪も失格も吹き飛ばせ! 山田正紀が描く“喪失系”警察ミステリ -消える自転車、消えるパンティ、そして消える街!?-

2025年3月26日
2025年3月26日

SAKURA 初版書影

叢書 TOKUMA NOVELS
出版社 徳間書店
発行日 2000/01/31
装幀 寺田克也、神崎夢現

収録作品

  • プロローグ
  • 第一話:自転車泥棒
  • 第二話:ブルセラ刑事
  • 第三話:デリバリー・サービス
  • 第四話:夜も眠れない
  • 第五話:人形の身代金
  • 第六話:消えた町
  • エピローグ

🌸“警察×B級×オフビート”の絶妙ハーモニー

山田正紀の『SAKURA-六方面喪失課-』は、1990年、バブル景気に浮かれる日本の片隅で、警視庁第六方面・綾瀬署の失踪課――通称「喪失課」の刑事たちが小さな事件を追ううちに、想像を超えた巨大な陰謀に巻き込まれていく連作ミステリー作品である。

主人公となるのは、「アニメオタク」「ギャンブル狂」「ブルセラ趣味」「怠け者」など、一癖も二癖もある刑事ばかり。彼らが個別に追う些細な事件は、やがて一つの点へと収束し、驚愕のラストへと読者を導いていく。


📖短編各話あらすじ

第1話「自転車泥棒」(渡辺一真)

放置自転車を回収するトラックとその運転手が突如行方不明になった。捜査に当たるのはアニメにしか興味がないオタク刑事・渡辺。地味な事件と思われたが、捜査線上に殺人事件が浮上し、意外な展開を見せる。

第2話「ブルセラ刑事」(鹿頭 勲)

ソープランド通いが趣味でトラブルメーカーの鹿頭刑事は、ヤクザ絡みのブルセラショップ盗難事件に巻き込まれる。下着泥棒というコミカルな事件から一転、事件は抗争劇へと発展していく。

第3話「デリバリー・サービス」(年代金吾)

頑固で短気な年代刑事が、遅延するピザ配達を怒鳴り込みに行ったことから、ピザ屋のスクーター失踪事件の捜査をする羽目に。だが、それは単純な盗難に留まらず、思わぬ誘拐事件への入り口だった。

第4話「夜も眠れない」(石動昭二)

怠惰で何もしない石動刑事は、なぜか地下鉄内殺人事件の容疑者のアリバイ証言を強要される。ところがそのアリバイには巧妙な罠が仕掛けられており、事件の真相に引きずり込まれていく。

第5話「人形の身代金」(磯貝正一郎)

喪失課の課長・磯貝が元同僚の妻子から助けを求められた矢先、娘が人形とともに忽然と姿を消す。単なる誘拐事件と思われたが、消えた場所が完全な密室状態という謎が浮かび上がる。

第6話「消えた町」(遠藤 貢)

クライマックス。突如消え失せた北綾瀬の町をめぐり、これまでバラバラに動いていた喪失課の刑事たちが一堂に集結。各事件が一本の線でつながり、謎の男SAKURAの正体とその目的が明らかにされていく。


📌本作の見どころと評価

『SAKURA-六方面喪失課-』の最大の魅力は、山田正紀ならではの軽妙な筆致と、コミカルで強烈な個性を持つ刑事たちのキャラクター造形にある。 最初はささいに思えた事件が複雑に絡み合い、最後には壮大なスケールのミステリーへと発展していく過程は見事。まさに「連作短編」の醍醐味がここにある。

オッド・リーダーの読感が「ユーモアアクションミステリ」と評する通り、軽快なユーモアと緻密なトリックが高い完成度で融合している。また、ミスナビが「ドラマ化可能」と評価するほど映像的魅力も高い。

一方、謎の中心人物「SAKURA」の描写に関しては、偽物の映画館の指摘通り若干存在感が薄い印象は否めない。しかし、ストーリー全体の疾走感と刑事たちの活躍によって十分に補われている。


🌟総評

『SAKURA-六方面喪失課-』は警察小説やミステリー小説の枠を超え、1990年という特異な時代背景を活かした優れたエンターテインメント作品となっている。クセのある刑事たちが見せる人間ドラマと事件が融合した構成は圧巻で、最後まで飽きさせない魅力が詰まっている。山田正紀ファンはもちろん、初めての読者にもおすすめできる傑作である。


📖参照・引用元一覧

文庫・再刊情報

SAKURA 文庫書影

叢書 徳間文庫<山田正紀・超絶ミステリコレクション#6>
出版社 徳間書店
発行日 2023/02/15
装幀 KENTOO、鈴木大輔(ソウルデザイン)